沖縄戦の「集団自決」に関する林博史教授意見書

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沖縄戦に関して、慶良間諸島渡嘉敷島にいた赤松嘉次という陸軍大尉の弟さんと座間味島にいた梅澤裕元陸軍少佐が、岩波書店大江健三郎氏を相手取って裁判をおこしている件に関して、ふと陸軍高射砲部隊の大隊長をしていた、あたしのおじいさんが生前、軍の兵器など民間人が持ち出したり、使ったりすることはありえない、兵器は厳重に管理されていて、軍人といえども演習や戦闘などの命令がなければ外に持ち出すことはできなかったと言っていたことを思い出しました。また軍人でも、兵器を壊したり、私物化して外部に持ち出したら、重い罪になるし、第一兵器をしまっておく倉庫などは衛兵がいて厳重に管理されているんで、誰もそんなことは考えないし、やったら脱走するのと同じように刑罰にかけられるんだそうです。
当たり前ですが、上記裁判でもこれが問題になっていないんでしょうか。つまり、軍から手榴弾を持ち出すことは軍人にしかできないし、住民に手榴弾が渡っていたなら、それは軍の命令でなければならないのです。
なぜ、こんな簡単なことが皆分からないのか、不思議です。沖縄戦においても、例えば赤松隊では兵器係軍曹がいて、その軍曹が住民に手榴弾を住民に配ったといいます。その行為は、明確な意図をもっていたのです。

以下、『海鷲よ甦れ』(森兵男)より引用。

「軍の住民の直接殺害も、もちろん問題であるが、いわゆる『集団自決』に関しても軍が関与していることは明白であり、それに関する責任の所在を明確にすべきである。

慶良間諸島は、沖縄戦のはじめに米軍が上陸した島々である。赤松嘉次陸軍大尉が隊長の海上挺進隊第三戦隊は、渡嘉敷島にいたが、それは住民を守るためではなく、特攻のためであった。そもそも、そこに住民がいること自体、作戦行動上邪魔であったのである。(略)
赤松大尉は役場の兵事主任や警察官を通じて住民を集めさせ、兵器軍曹をして住民に手榴弾を配らしめたが、その兵器軍曹は『敵に遭遇したら一発は敵に投げ、捕虜になる恐れのあるときは、残りの一発で自決せよ』と住民(あるいは防衛隊)に訓示している。

これはその兵事主任の証言があり、『集団自決』の際に手榴弾が配られたことは住民の証言から明らかである。そもそも、『集団自決』は九一式など陸軍の手榴弾を使って行われている。
そして、『集団自決』の後も、生き残った住民と居残った日本軍の将兵は共同で暮らし、『今日只今から村民は牛馬豚の屠殺を禁止する、もし違反する者は、処刑する』と赤松隊長が家畜などを住民が食糧にするのを厳しく制限した。つまり、住民を自決で減らしておいて、食糧を温存しようとしたものと思われる。その赤松も、結局米軍の捕虜となった。

軍が『集団自決』に関与していないと主張するものは、陸軍の九一式、九七式手榴弾が、沖縄の島のどこかの店で売っていて、沖縄住民のおじさん、おばさんが買っていたとでも言うのであろうか。」

この森兵男さん、関西の海軍航空隊にいた人なので、当然自分が沖縄に行ってきて体験した訳ではなく、本人のご意見も伝聞や書物によるものですが、自分自身が飛行兵で軍隊のあり方についてはよく知っておられると思います。あたしも同じ意見。

どう考えても、軍が大切な兵器を単なる護身用にとかで住民に配ったはずがありません。悲惨であったのは、その手榴弾が不発になっていたものが多く、そのため家族同士で撲殺するような形で死んだ人が多いということ。また、村民が手榴弾などで集団でなくなったあとは、見るも無残な有様だったといいます。

座間味にいた梅澤裕元陸軍少佐については、慰安婦と一緒に壕から壕を逃げ回り、負傷したことを良いことにわざと米軍の捕虜になったふしがあり、陸軍刑法で定めた「奔敵」(敵に走る)にも該当する可能性があります。しかも、かつての部下や味方が戦っているのに、米軍に捕まると味方に米軍に投降するように呼びかける役割をしています。それで助かった人がいたかもしれませんが、あたしはこういう人は信用できません。自分が助かりたいからと味方を裏切った人は、一生卑怯者なのです。

最近、関東学院大学林博史教授がこの問題に関して、意見書を出しました。沖縄戦の研究者である林教授は文部科学省が「集団自決」(強制集団死)の日本軍強制の記述修正を求める根拠に自著を挙げたことについて、前後の文脈からみて明らかに赤松隊長は確かに命令していなくても、日本軍の沖縄でつみ重ねて来た行動、日常的な軍民の関係等により、結果として軍の強制になっていたことが読み取れるのに、赤松隊長が命令していないという一文の記述をもって軍強制の免罪符としてことに憤りをもっていました。今回、その林博史教授は文部科学省から教科書検定問題で「集団自決」に関する意見書を依頼されていましたので、意見書のなかで「集団自決」が「日本軍による強制と誘導によるもの」と軍の関与を明確に述べたものです。
林教授によると、その意見書自体を転載するのは遠慮してくださいということですが、HPへのリンクはOKとのことですので、遠慮なくリンクさせていただきます。

しかし、政府文部科学省の小役人の姑息なやり方にはウンザリです。なぜ、マスコミは、そんな連中を放って置くのか分りません。自民党の機関紙といわれる産経新聞なんかは、逆の宣伝をしていますし。防衛省官僚と闇商人の癒着についても追求は及び腰だし、だらしないなあと思います。

(以下資料)
沖縄戦の「集団自決」への教科書検定について
 文部科学省 教科用図書検定調査審議会に提出した意見書を公表するにあたって   林 博史”